スマートテレバッグが生まれるまで

スマートテレバッグが生まれるまで

01 トラベルバッグの開発

現在の会社を立ち上げる前に、私は別の会社で旅行用のバッグの開発をしていました。国内、海外問わず旅行が好きだった私は、どうせ作るなら今までにないトラベルバッグを開発したい!と、色々アイディアを練りました。その時は、時間が少しでも出来れば、東京でも大阪でも地元でも、店頭にならんでいるバッグをかたっぱしから見て歩きました。実際にデッサンしてみたアイディアは、パスポートケースから旅行用のバッグパックまで多岐にわたりましたが、「この商品にしか提供できない価値」はなかなか見つかりませんでした。その時は、世の中にないものを生み出すのって本当に難しいことだとあらためて感じました。そんなある日の事です。特急電車に乗った際、座席のシートポケットにスマホのバッテリーを置き忘れてしまいました。電車に忘れたことをすぐに気付いたので慌てて電話し、無事にバッテリーは帰ってきましたが、昔、飛行機のシートポケットにその日使うガイドブックを忘れたことを思い出しました。この瞬間が、開発のターニングポイントとなりました。座席で使うものを1つにまとめられるバッグがあれば、忘れ物がなくなるぞ。と思ったところから製品開発が一気に前に進みました。旅行と言えば必ず移動が必要となり、電車、バス、飛行機などあらゆる移動手段があります。そんな移動時に使う「座席で必要なものを1つにまとめる、移動中を快適に過ごすためのバッグ」は今までにない新しいものだと感じました。飛行機の中で隣の人に遠慮しながらも、上の棚を開けて、パスポートを取り出さなくてはならない人も多いのではないか、等これまでの旅行の経験も役に立ちました。こうして今までにない、移動する乗り物で使う座席用バッグを開発することができ、2か月で、実に2200人以上のお客様にご支持いただきました。

02 思いがけない転換点

トラベルバッグの開発を通して、新しいものを生み出すことの楽しさを知った私は Future Memory合同会社 を新たに設立し、トラベルグッズの開発をおこなうことにしました。Future Memory (未来の思い出)という会社名には、友達、家族、大切な人との楽しい時間に使ってもらえるバッグを開発したい、という思いが込められています。

実は、新会社での最初の商品としてはパスポートケースを考えていました。単なるパスポートケースでなく、これまでにない機能を詰め込んだものを試作しようとしていた頃、コロナウィルスが徐々に広がりを見せ、緊急事態宣言が発令される事態にまでなってしまいました。便利な旅行用品を開発しても、喜ばれる状況でなくなっていきました。発想の転換が必要となりました。こんな時代に合った商品とはどんな商品か、私が世の中に提供できる価値は何かを考え続けました。

03 コンセプトの見直し

「会社へ出勤しお客様へは訪問する」そんな当たり前がコロナの影響で大きく変わりました。働く場所は会社だけでなく、打合せはネットで、が普通に行われる時代になろうとしています。在宅勤務、テレワーク、リモートワーク、ワーケーションなどの言葉も聞きなれるようになった今、バッグの在り方を見直してもいいのではないか、いや見直さなければならないのでは、と思ってます。もともと、いろんな機能を持ったバッグを開発したいという思いがあったのですが、さらに、1つの機能を複数の用途で使えるもの、私の好きな言葉でいうと、ポリバレント*なものにできないかと考えました。そこで思いついたのが、バッグをリバーシブルにして、全く別の用途で使うというアイディアでした。そのアイディアに現在の社会環境を照らし合わせてできたのが、「移動時はバッグ、仕事時はペン立てなどのステーショナリーホルダーとして使えるバッグ」というコンセプトです。これまでは移動のときに、ものを運ぶためだったバッグを仕事でもつかえるアイテムにすることで、オフィス環境をそのまま持ち運ぶというコンセプトができました。
*ポリバレント:化学の分野における多価を指す言葉

04 バッグのサイズ決め

コンセプトと商品イメージができたので、さっそく仕様を決めていくフェーズに移りました。最初に、バッグのサイズ感を決める作業です。まず、仕事をする上で必要なものを片っ端からあげていき、そのサイズを調べることから始めました。スマホ1台とっても、小さいサイズから大きいサイズまで多種多少、ノートパソコンに至っては、何インチかによって大きさが全然違うので、どのサイズまでを対象にしたらよいかなど悩みました。当然のことですが、できるだけ大きいサイズまで入るようにすると、バッグが大きくなり重くなるといった弊害が生まれます。ポケットのサイズもペン、定期券、スマホ、財布、充電器など形が各種各様で、最適なポケットのサイズは何か、移動中に取り出したいものはバッグの上側に配置するなど徹底的にこだわりました。大事なものを入れるポケットはチャック付き、取り出しやすいものはオープンポケットなど、ポケットの種類にもこだわりました。試作をおこなっていくと、外側のオープンポケットはガバガバ開いてしまうので、見た目がよくないという課題がでてきました。その課題は、磁石ボタンで留められるようにすることで解決しました。ポケットはバッグにとって必要不可欠で重要な機能です。そのポケットを持ち運ぶものを想定し配置など細部までこだわりをもって決めていきました。

05 リバーシブル機能の実現

バッグをリバーシブルにすることで、バッグの内側のポケットをステーショナリーホルダーとして使えるようになります。そういう意味において、リバーシブル機能は、今回の製品で肝となります。リバーシブルなので、表からも裏からも、簡単に開き閉めできるように、スライダー部が表と裏で回転できる回転式のファスナーを採用しました。さらに、左右どちらからでも開き閉めできるようにダブルファスナーにしました。ところが、試作に向けて回転式ファスナーを探しましたが、どこのお店を探しても見つからず、入手するのに苦労しました。最終的にはネットショップで廃番となった在庫限りのものを購入することができましたが、流通が多くない部品を調達する難しさを感じたので、量産用の部品調達に向けての交渉をその時期より始めました。
また、リバーシブルの実現方法も課題の1つでした。リバーシブルにするにはバッグの4辺のうち、3辺をファスナーとして大きく開くことにしましたが、バッグの強度を残りの1辺で支える必要があり、その1辺の強度をだすために、表地から、中に入れる芯地やウレタンの素材まで最適なものは何かをいろいろ試しました。固いものを入れると強度はでるが、その分重くなるというジレンマとの闘いでした。

06 最大の難関は自立機構

この商品の一番の難しさは、ステーショナリーホルダーを実現するための安定した自立機構でした。自立させるためにはバッグのマチを大きくして側面を堅い素材にするのがよいのですが、やりすぎると重くなってしまいます。最初の試作ではバッグの中に芯地を入れて強度をだしたのですが、重さが1.2kgにもなってしまい、持った瞬間にその重さが気になってしまいました。その次の試作では軽さを追求したのですが、今度は強度が足りず、ポケットにスマホを入れた瞬間に倒れてしまいました。その後も生地の材質、中に入れる素材などを変え試作を繰り返すことなんと7回にも及びました。試作の度にポケットの位置もmm単位で調整し、強度と重さのバランスの最適なポイントを探し続けました。最終的にはバッグの片面と支えとなる網ポケットにプラスティック板を入れ自立を安定させました。ポケットの位置もファスナーがない辺に寄せ重さのあるものを入れても強度を保つ設計としました。その結果重さは最初に手にした際も気にならないレベルの600gに抑えることができました。網ポケットにはプラスティック板を入れることで、切符、搭乗券、パスポートなど折り曲げたくないものを入れるのに最適なポケットとなりました。ここでも自立機構と折れ曲がらないポケットという1つの機能で2つの効果を発揮するポリバレントな仕様を実現しています。
底板の活用もポリバレントに貢献しています。今回のバッグは3辺ファスナーとなっているため底がファスナーになっています。ファスナー部に重いパソコンの負荷がかかり続けるとファスナーの破損の可能性があったため、底板を入れていました。その底板を自立モードでは支えとなる網ポケットとジョイントすることで安定した自立を実現しています。ここでも底板がファスナーの保護と自立の安定化の2つの仕様を実現するポリバレントな機能となりました。
また、マチの大きさも悩んだポイントです。最初はペットボトルを入れることを想定しマチを大きめにしましたが、見た目が分厚くなってしまい、スマートとは言えませんでした。また、夏場の冷たいペットボトルは水滴がついてしまい、いっしょに入れるパソコンに害を与える、そもそもペットボトルはバッグに入れないという意見も多く、最終的にはペットボトルは入れない方針としました。

07 スマホは立たせるのが便利

実は私、スマホの置き場所に困っていました。最近はオンラインミーティングが増えてきましたが、パソコンはメモをとるために使いたいため、スマホでミーティングに参加していました。眼鏡ケースにスマホを立てかけたりしていたのですが、机の素材によっては滑ってしまい打合せの途中で倒れていました。なので今回のステーショナリーホルダーにスマホを立てかける機能をどうしてもつけたくて、実現方法をいろいろ考えていました。試作で何回か試したのですが、布のままでは滑るので、滑り止めをつけたり、サイズを試作の中で変えながら、地道に開発を続けました。試作品を使ったときに気づいたのですが、パソコンの横にスマホを立てておくと、パソコンで作業している際、スマホにメッセージがきても、わずかに視線をずらすだけで内容が確認できるのが、とても便利に感じました。机の上にスマホを置くと画面が天井を向いているので、メッセージがくるたびに画面をのぞき込む動作が必要となって、作業を中断される感覚があったのですが、このスマホスタンドだと中断される感覚がないです。こうしてスマホだけでなく、パンフレットなどを立てかけたり、何かを見ながらパソコンで作業するのに便利なスタンド機能が完成しました。

08 バッグとしての機能

新発想のバッグと言ってもバッグであることに変わりはありません。基本的な機能をおろそかになっては本末転倒です。今回のバッグは手提げとショルダーベルトとの2WAYにしていますが、ショルダーベルトにもこだわりました。ショルダーベルトは幅が細いと肩に食い込みやすくなるため幅が広い方がよいのですが、あまり広すぎると見た目がきれいに見えません。また肩パッドも幅が広い方が重さが分散されるので好ましいのですが、肩パッドが大きすぎると肩から降ろしたときにじゃまになります。そこで色々なサイズのショルダーベルトを機能面、デザイン面で確認し、幅38mmのナイロン製のショルダーベルトを、また肩パッドはベルト幅にすっきり収まる直線型のゴム製パッドを採用しました。ゴム製の肩パッドは滑り止め加工がされているため実際に使ってみると滑りにくくワイシャツなどで滑りやすい素材でもしっかりホールドしてくれます。

09 スマートテレバッグという提案

納得がいくまで試作を繰り返し、ようやく形になったときは、本当にうれしかったです。こうしてできた製品をできるだけ多くの方に届けられるよう呼び名をどうするかについて多くの検討を重ねました。数多くの候補の中から、使用場面がイメージしやすく、新しい提案のバッグである事が伝わりやすい名前を選びました。それが、「スマートテレバッグ」です。これまでのバッグは運ぶだけのもの。これからの時代は働く場所は移動する。運ぶだけのバッグではなく使うためのバッグ、新しい時代でバッグも変わる、そんなメッセージを込めた私のこだわりが詰まったスマートテレバッグがこうして誕生しました。

ここまで私のこだわりに付き合ってくれた弊社スタッフ、外注先、工場の方々に感謝しかありません。何回も難しい状況になっても、みなさまのご協力、努力によりスマートテレバッグを開発することができました。そして何よりもこの記事を最後まで読んでいただいた皆様、応援してくださる方々、実際に購入いただいたお客様に感謝したいと思います。これからも皆様に愛される商品の開発をおこなっていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

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